『ジャパンカップ(GⅠ)2020アーモンドアイ血統考察』YRA

血統調査員のYRAです。
「血統表は競走馬の設計図!」ということで
今週は11月29日に開催されたジャパンカップ(G1)を勝ったアーモンドアイを取り上げます。
2枠2番アーモンドアイは好スタートを切ると、少し控えて5番手の位置から。
レースはキセキが大逃げで引っ張る展開に。
3番手の位置で直線を迎えると、少し外に持ち出して追い出しを開始。
残り200mを切って2番手に浮上すると、残り100mの地点で先頭に。
そのまま後続から追いつめてくるコントレイルを引き連れて、最後のゴール板を駆け抜けた。
本馬はこれで前人未到のG1 9勝目。
自身が持つG1 8勝の記録を更新し、有終の美を飾った。
アーモンドアイの父ロードカナロアは現役時代、国内外で19戦13勝(2着5回3着1回と馬券圏外は一度もなし)。
主な勝ち鞍は香港スプリント(2回)、スプリンターズステークス(2回)、高松宮記念、安田記念とG1を6勝。
2013年には年度代表馬に選出されている。
自身はスプリント~マイルで活躍したが、産駒はサートゥルナーリア(ホープフルステークス、皐月賞)やステルヴィオ(マイルチャンピオンシップ)、そして本馬(牝馬3冠、ジャパンカップ、ドバイターフ、天皇賞・秋)と種牡馬としての距離の守備範囲は広い。
2017年デビュー(2015年産駒)がファーストクロップで、2019年の種牡馬ランクは第3位。
母フサイチパンドラは現役時、21戦4勝。主な勝ち鞍はエリザベス女王杯(G1)
血統背景は、父サンデーサイレンス×母父Nureyev(ノーザンダンサー系)の組み合わせ。
繁殖として、これまで本馬を含め9頭。
父シンボリクリスエス(2勝)→父シンボリクリスエス(1勝)→父キングカメハメハ(1勝)→父キングカメハメハ(中央未勝利)→父ハービンジャー(1勝)→父キングカメハメハ(未デビュー)→父ロードカナロア(本馬)→父ヨハネスブルグ(2勝、現役)→父ルーラーシップ(未勝利、現役)
勝ち上がり率は高いが、1勝クラスが多く、条件馬ばかりであった。
そんな中で突如、大物として出現したのが本馬である。
父ロードカナロアは非サンデー系なので母方にサンデーを持つ肌馬との交配が強みであり、成功の近道。
種牡馬として本馬が代表産駒。血統配合の成功例も当然本馬となる。
本馬の血統表を見ていくと、母にSex Appealを持つこととNureyevのクロスを持つことが核心部分。
Sex Appealは母の祖母(母母母)で米国馬。自身は未出走。
繁殖としてはトライマイベスト(イギリス・デューハーストS)、El Gran Senor(アイルランドダービー、イギリス1000ギニー)と2頭のG1馬を輩出した名繁殖牝馬。
本馬の他にはヴァルディゼール(シンザン記念(G3))も母方にSex Appealを持っている。
Nureyevはアメリカ型ノーザンダンサー系で、そのクロスはスピード力を増幅する効果がある。
父との配合では他にルガールカルム(アネモネ・L)が該当する。
今後もこの2つの血は、父の成功配合パターンとして意識しておきたい。
前走の天皇賞(秋)でG1 8勝という新しい記録を更新したことがまだ記憶に新しい中で、前人未到の9勝目という、さらなる偉業をこの引退レースで打ち立てました。
牡牝無敗3冠馬2頭を後ろに従えながら、先頭で駆け抜けていくその姿は、自身の後にこの競馬界の中心として盛り上げていくべき「主役達」にその役割を伝えているようでした。
偉大なる女王から直接そのバトンを受け取ったこの2頭は、この敗戦によりさらなる成長を遂げることでしょう。
そして来年の競馬界の中心として、より一層光輝く存在となることを確信しています。
競馬は血を紡ぐブラッドスポーツと呼ばれますが、受け継ぐものは「血」だけではなく、強者から強者へその「意思」も受け継がれるのだということをこのレースで教えてもらいました。
こうしてアーモンドアイはターフを去ることとなりますが、今後その「血」は仔に確かに引き継がれていくこととなります。
初年度の交配相手はエピファネイアを予定されているようです。
受け継がれた血がどのような活躍を見せてくれるのか。
そのことに思いを馳せた時、既にアーモンドアイを巡る競馬の物語の続きは始まっているのかもしれません。
輝き続けた約3年間、本当にお疲れ様でした。
投稿者プロフィール

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血統の設計図から好走率を占う予想家
趣味の一口馬主が高じて牧場通いをするも「馬関係者でも走る馬はわからない」という結論に至る。そこから少しでも走る馬を見極めるために血統に没頭。血統から展開されるレース回顧は好評を得ている。
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