『2019年にデビューした新人騎手の本当の実力を大公開』田中洋平
2020年も2月に入り、
競馬界の別れと出会いの季節が近づいてきましたね。
3月に入れば2020年の新人騎手がデビューしますが、
豊作と言われた2019年デビューの新人騎手たちは、どうだったのか?
デビューから約1年経ったので、考察してみたいと思います。
まず2019年にデビューしたのは、以下の8名。
◆関東(美浦トレセン所属)
菅原明良(高木登厩舎)
大塚海渡(木村哲也厩舎)
小林凌大(小西一夫厩舎)
◆関西(栗東トレセン所属)
斎藤新(安田隆行厩舎)
岩田望来(藤原英昭厩舎)
団野大成(斉藤崇史厩舎)
藤井勘一郎(フリー)
亀田温心(北出成人厩舎)
藤井勘一郎騎手はJRAの競馬学校の受験を体重制限で断念して、
その後、ライセンス取得が比較的容易なオーストラリアでデビュー。
韓国などで騎乗経験を積んで、念願のJRAデビューと経験豊富な36歳。
他のピカピカの新人とは少し毛色が違いますが、
せっかくなので同じように見て行きましょう。
まず2019年3月1日~2020年1月末までの成績をご覧ください。
騎手 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
---|---|---|---|---|---|---|
斎藤新 | 45- 47- 41-502/635 | 7.1% | 14.5% | 20.9% | 49 | 62 |
岩田望来 | 39- 34- 41-468/582 | 6.7% | 12.5% | 19.6% | 71 | 80 |
菅原明良 | 32- 37- 35-464/568 | 5.6% | 12.1% | 18.3% | 70 | 77 |
団野大成 | 30- 31- 33-395/489 | 6.1% | 12.5% | 19.2% | 61 | 94 |
藤井勘一 | 16- 18- 24-332/390 | 4.1% | 8.7% | 14.9% | 53 | 72 |
亀田温心 | 15- 14- 14-375/418 | 3.6% | 6.9% | 10.3% | 90 | 59 |
大塚海渡 | 3- 7- 7-161/178 | 1.7% | 5.6% | 9.6% | 37 | 59 |
小林凌大 | 1- 10- 8-207/226 | 0.4% | 4.9% | 8.4% | 3 | 62 |
黒文字が美浦所属騎手で、青文字が栗東所属騎手です。
勝ち星なら斎藤誠調教師の子供である斎藤新騎手が一番。
デビューしてすぐは断トツのスタートダッシュを決めていた印象でしたが、
1年経って他の騎手に追いつかれてきた感じですね。
その猛追する一番手が岩田康誠騎手の次男、岩田望来騎手。
ヴィクトリアマイル2連覇にスプリンターズSを制したストレイトガール、
皐月賞馬のエポカドーロ、高松宮記念を制したミスターメロディなど、
有力馬が盛りだくさんの名門、藤原英昭厩舎の所属。
岩田望来騎手は、本当に将来有望の環境ですね。
そして美浦所属でトップを走るのは菅原明良騎手。
こちらはチャンピオンズカップを制したサウンドトゥルーに、
JBCレディスクラシックを連覇したホワイトフーガなど、
ダートで圧倒的な強さを誇る高木登厩舎に所属です。
美浦所属のほか2名の成績が振るわないだけに、
菅原明良騎手はかなり善戦しているように思います。
このように2019年デビューの新人では、斉藤新騎手が一番勝っている。
あと1ヵ月で斎藤新騎手と岩田望来騎手の6勝差が逆転するとは、
ちょっと考えづらいかと思います。
ということで、2019年デビュー組でもっとも優秀なのは、
斉藤新騎手ということで、よろしいでしょうか?
いえいえ、違いますね。
こちらのデータをご覧ください。
騎手 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
---|---|---|---|---|---|---|
斎藤新 | 29- 20- 18- 93/160 | 18.1% | 30.6% | 41.9% | 69 | 65 |
岩田望来 | 22- 12- 10- 55/ 99 | 22.2% | 34.3% | 44.4% | 100 | 75 |
団野大成 | 17- 13- 8- 37/ 75 | 22.7% | 40.0% | 50.7% | 120 | 84 |
菅原明良 | 17- 12- 13- 29/ 71 | 23.9% | 40.8% | 59.2% | 95 | 95 |
藤井勘一 | 8- 3- 9- 20/ 40 | 20.0% | 27.5% | 50.0% | 97 | 90 |
亀田温心 | 7- 3- 5- 19/ 34 | 20.6% | 29.4% | 44.1% | 99 | 80 |
小林凌大 | 0- 3- 1- 5/ 9 | 0.0% | 33.3% | 44.4% | 0 | 73 |
大塚海渡 | 0- 2- 1- 3/ 6 | 0.0% | 33.3% | 50.0% | 0 | 83 |
これは1~3番人気の馬に騎乗した場合の成績です。
斉藤新騎手は、1~3番人気馬の騎乗機会が160回と、
実は他の騎手比べて断トツに多いのです。
だから勝ち星が多くなるのも当然。
しかし成績面は、他の騎手に比べてあまり良くないですね。
勝てる可能性の高い馬に乗って、思ったより勝てていない。
ということになります。
その視点からデータを見ると、美浦所属の菅原明良騎手が一番成績が優秀。
勝つべき時に、しっかり期待に応えて勝てている騎手。
これは将来有望ですね。
この勝つべき時に勝てている騎手、という視点から、
成績、回収率を考慮して、私が独自にランキングをつけてみました。
1位 菅原明良騎手
2位 団野大成騎手
3位 岩田望来騎手
4位 藤井勘一郎騎手
5位 亀田温心騎手
6位 斎藤新騎手
7位 小林凌大騎手
7位 大塚海渡騎手
成績面、回収率面から考えて菅原明良騎手は確実。
4位の藤井勘一郎騎手と、5位の亀田温心騎手はほぼ同等ですが、
複勝率の高さから藤井勘一郎騎手を上に。
6位の斎藤新騎手は成績面は4~5位と同じくらいですが、
やはり回収率が低すぎますね。
回収率が低いということは、
断トツの1番人気なんかを飛ばしているということですから、
この順位は仕方がないでしょう。
最後に小林凌大騎手と大塚海渡騎手は、
騎乗機会が少なすぎるので、同じ順位という評価にしました。
ただ人気サイドの馬に乗って一度も勝ててないのは痛恨ですね。
関係者からの信頼に繋がる部分なので、
この先の騎乗依頼が少し心配ではあります。
大塚海渡騎手は新進気鋭の木村哲也厩舎所属ですから、
もっと勝ち星を伸ばしても良さそうな環境ですけどね。
大塚海渡騎手の技術がある程度のレベルまで達したら、
もっと自厩舎の馬に乗せるのかもしれません。
小林凌大騎手と大塚海渡騎手は、
2020年は躍進できるように頑張って欲しいと思います。
このようにパッと見の字面だけをみると、
2020年の最多勝利新人騎手賞に選ばれた斎藤新騎手が優秀に見える。
でも本当は、菅原明良騎手、団野大成騎手、岩田望来騎手の3人の方が、
上手い可能性が高いということを憶えておいてください。
人気馬に乗った時の回収率も高いので、
積極的に狙っていくのもありですね。
ぜひ参考にしてください。
投稿者プロフィール
-
田中洋平(日刊スポーツ公認のコンピ指数研究家)
かつてはダイニングバーの経営者だったが、現在は競馬研究ひと筋。「競馬最強の法則」の馬券ブラックジャーナルコーナーにおいて、2009年に逃げ穴馬馬券術を紹介。2010年には同誌にて「コンピアナライズを追え」で巻頭でデビューを果たし、2012年にKKベストセラーズより「新コンピアナライズ・ゾーンレベル」を出版。現在は日刊スポーツ公認のコンピ指数研究家として日刊公式ウェブサイト「極ウマ・プレミアム」にてコラム、テクニカル6を連載中。また重賞特集号として日刊スポーツが発行しているタブロイド紙のコンピ予想も担当している。
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