『ノーザンファーム天栄は西高東低の図式を根底から覆す』高橋広治

こんにちは、高橋広治です。
よろしくお願いいたします。
前回はしがらきのことを書いたので、今回はノーザンファーム生産馬の東の拠点、ノーザンファーム天栄について書きたいと思います。
ノーザンファーム天栄がある所は、福島県岩瀬郡天栄村という静かな山あいの地。
元々は天栄ホースパークという、シルク名義の育成牧場でしたが、シルクをノーザンファームが2011年に買収したことによって、ノーザンファーム天栄(以下NF天栄)と改名し、ノーザンファーム生産馬の育成、休息の場になった訳です。
NFしがらきには及ばないものの、286もの馬房数、また大規模な施設改造により、トレセン顔負けの充実したトレーニング施設となったのは、言うまでもありません。
その中でも1番のターニングポイントは、やはり坂路コースの勾配をより急にして(高低差36m)、栗東やしがらきの坂路と遜色なくしたことでしょう。
新坂路に生まれ変わったのが2017年ですが、そこから、アーモンドアイやレイデオロ、ブラストワンピースなど、彗星のごとくG1ホースが多数出てきたのは、記憶に新しい所です。
まさしく今トレンドの、ノリに乗っている外厩だと思います。
そんなNF天栄上がりの馬の成績を、同じNFの外厩、NFしがらきと比較しながら見てみましょう。
検証期間は近3年間。
所属 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
---|---|---|---|---|---|---|
しが | 612- 541- 482-3326/4961 | 12.3% | 23.2% | 33.0% | 78 | 80 |
天栄 | 543- 410- 338-2345/3636 | 14.9% | 26.2% | 35.5% | 82 | 82 |
ご覧のように、馬房数の違いから出走数こそしがらきが上ですが、成績の方は、天栄上がりの馬が、しがらき上がりの馬を大きくリードしております。
なぜ、同じNFの外厩なのに、東と西でこんなに違うのでしょうか?
私は、大きく分けて2つの理由があると考えます。
まず1つは、先ほども触れましたが、坂路調教の観点から。
ざっくり言いますと、関東馬の中で、急勾配の坂路調教ができるのは、NF天栄馬しかおりません。(もちろん例外もありますが)
美浦トレセンの坂路も、天栄ほどの高低差はありませんし、他の外厩でも、坂路を持っている外厩は山元トレセン位で、他の馬は厳しい坂路調教をしたくても、できないのが現状です。
この時点で、天栄の馬の方が、一歩も二歩もリードしていると言えます。
厳しい坂路調教を課した馬と、課していない馬が同じレースで勝負するのですから、天栄の馬の成績が上がるのは一目瞭然でしょう。
対して関西馬の方はというと、しがらきの坂路でトレーニングした馬は、もちろん強いです。
ただ、こちらは栗東トレセンという、しがらきには及ばないものの、しっかり急勾配の坂路がありますね。
場所がトレセンですから、関西馬であれば、坂路はどの馬でも走ることができます。
ですので、いくらしがらきの坂路でトレーニングしたからといっても、非NF馬もしっかり栗東坂路で乗り込めますので、さほど能力差が付きにくいと考え、天栄上がりより、成績が悪いように見えるのではないでしょうか?
次に2つめの理由ですが、単純に、素質馬に関東馬が多くなってきていると考えることができます。
以前は、皆さんご存知のように、強い馬は関西馬!というのが定石でした。
ではどうして最近NFは、美浦に素質馬を送り込んでいるのでしょう?
私は、NFと、調教師の関係性が絡んでいると思います。
NF馬は、もはや「一強体制」ですから、生産者の力が強大です。
いくら入厩馬と言っても、ローテーションや、騎手や、トレーニングの質や量まで、多岐に渡り進言してくることでしょう。
一方、栗東の調教師は、いわゆるドンというか、名伯楽というか、巨匠というか、そういった重鎮の調教師がたくさんおります。
関西馬隆盛・発展に携わったという自負も、もちろんあるでしょうから、いくら生産者と言えども、「そこはワシの仕事」と、好意的に思わない調教師も、少なからずいることでしょう。
昔話になってしまいますが、池江泰寿厩舎の父、池江泰郎元調教師がディープインパクトを管理していた時代、師は、ディープインパクトを引退するまで外厩に出すことなく、自厩舎で丹念に仕上げておりました。
もちろんNF天栄も、NFしがらきも無かった時代ですが。
その点、関東の調教師は、外厩制度に柔軟に対応していると言えます。
その証拠に、歴史的名馬になろうかというアーモンドアイは国枝栄調教師、ダービー馬レイデオロは藤沢和雄調教師の管理馬です。
国枝調教師も、藤沢調教師も、関東ではトップクラスの、有能な調教師であることは言うまでもありません。
その有能な2人が、外厩制度を巧みに利用しているのであれば、他の厩舎はもちろん、今まで外厩に背を向けていた厩舎も、外厩と密接に関わって結果を出そうと思うのは、当然の流れでしょう。
長くなりましたが、私は以上の2つの理由があると考えます。
もちろん推測の域を出ませんが、大きく的外れという事は無いでしょう。
かなり脱線しましたが、最後に、天栄上がりの馬をどこで狙うのか?
クラス別の成績を見てみましょう。
クラス | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
---|---|---|---|---|---|
新馬 | 23.1% | 38.7% | 53.5% | 138 | 108 |
未勝利 | 14.4% | 26.0% | 34.6% | 76 | 87 |
1勝 | 14.4% | 24.4% | 32.7% | 79 | 86 |
2勝 | 14.4% | 23.8% | 33.0% | 74 | 67 |
3勝 | 11.9% | 24.2% | 32.0% | 70 | 67 |
OPEN他 | 8.5% | 22.9% | 33.9% | 39 | 84 |
OPEN(L) | 10.0% | 26.7% | 40.0% | 56 | 69 |
G3 | 13.2% | 23.1% | 29.7% | 82 | 66 |
G2 | 11.9% | 23.8% | 34.7% | 63 | 64 |
G1 | 16.9% | 24.7% | 31.2% | 91 | 66 |
ご覧のように一目瞭然。
新馬が圧倒的な成績で、回収率もすこぶる高く、ここを狙わない手はありません。
NF馬は1歳、馬によっては当歳から、早来の、ノーザンファーム総本山や、ノーザンファーム空港で育成・調教を行い、2歳でNF天栄・しがらきに入厩し、トレーニングに励み、春夏の新馬戦に挑むのです。
良い結果になるのは言うまでもないでしょう。
同じ社台系でも、馬本位を掲げる社台ファームは無理に仕上げることはなく、3歳デビューの馬も珍しくありません。
もちろん、どちらが良いかという事ではなく、巨大勢力であるNFが、その手綱を緩めることなく、メンバーの手薄な新馬戦を狙ってくるという事が、何より、したたかだなぁと、感心してしまいます。
どうか、馬券選びの参考にされて下さい。
長くなりましたが、最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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データを駆使した戦略競馬の賢才
人と違う視点や切り口で競馬を分析することに長けている頭脳派。データ分析ソフト『TARGET』を使いこなして、周りがアッと驚く馬券術を生み出す。そのレベルは折り紙付きだ。
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