『山元トレセンのトリセツのつもりが……』高橋広治
こんにちは、高橋広治です。
よろしくお願いいたします。
今回は、外厩の老舗中の老舗、山元トレーニングセンターについて調べてみましょう。
山元トレセンの歴史は古く、1992年に開設されております。
この時代は、今のように吉田一族が独立する以前で、共同経営をしていた時期です。
今でこそ外厩の重要性があちらこちらで唱えられていますが、社台グループは、いち早く外厩(この時は外厩という言葉すら無かった)の重要性を察知し、自前の育成牧場を作ってしまうあたりが、さすが先見の明があると言いますか、ただただ感心させられます。
山元トレーニングセンターがあるのは、宮城県の南東部にある山元町という所です。
2011年、あの東日本大震災と津波によって、山元トレセンも甚大な被害を受けました。
でも、在厩馬とスタッフは、全員ノーザンファーム本場やNFしがらきへ避難することができ、事なきを得たのです。
昨日の敵は今日の友という言葉がありますが、普段ライバル関係にある社台ファームとノーザンファームが、不測の事態が起きた時はしっかり相互扶助できる関係と言うのが、やっぱり天下の社台グループだなと、改めて実感しますね。
現在、山元トレセンを使用している馬は、主に、吉田3兄弟の長男、照哉氏の社台ファームと、三男晴哉氏の追分ファームと、あとは3兄弟で共同経営している白老ファームの生産馬たちです。
かつては次男勝己氏のノーザンファーム生産馬も山元トレセンに預託されておりましたが、2012年にNF天栄ができてからは、全てそちらに預託されております。
長男照哉氏と、次男勝己氏はよくライバル視されますが、2人の違いを端的に示すデータがあります。
NF天栄上がりの馬と、山元トレセン上がりの馬の、新馬戦の成績がこちら。
検証期間は近3年間。
外厩 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
---|---|---|---|---|---|---|
天栄 | 98- 66- 63- 197/ 424 | 23.1% | 38.7% | 53.5% | 138 | 108 |
山元 | 39- 46- 39- 300/ 424 | 9.2% | 20.0% | 29.2% | 50 | 76 |
出走頭数は一緒なのに、成績が雲泥の差。
今はNF1強時代なので、単純に馬の力の差かと思いきや、他のクラスではこんなに差は付きません。
どうしてでしょう?
それは、ノーザンファームと社台ファームの、馬に向き合うスタイルの違いかと思われます。
次男勝己氏は、生産馬に1歳からトレーニングをし始め、2歳で、屋根付きの傾斜がキツい坂路でハードトレーニングを課すなど、人の手、設備の力によって能力を引き出し、2歳の早い時期の新馬戦に間に合わす訳です。
そんな馬は当然、3歳クラシックを見据えていますので、早い時期に使うことによって、その後のローテーションに余裕を持たせる狙いもあるでしょう。
アーモンドアイに代表されるように、最近のNF馬はトライアルレースを使うことなく、天栄またはしがらき上がりの休養明けでしっかり結果を残すパターンがトレンドですよね。
一方照哉氏は、若いうちからムリに成長を促すこと無く、自然に成長を待つ馬本位、馬第一の姿勢を崩しておりません。
社台ファーム本家にも、山元トレセンにも屋根付きの坂路が無く、雪が降ったらトレーニングするのも困難ですので、冬場は閉鎖してしまう時もありそうです。
照哉氏のこの、馬優先主義は個人的にとても好感が持てます。
血統配合においても遊び心があり、ノヴェリスト、ワークフォース、キンシャサノキセキと言ったシブい馬を好む傾向です。
騎手選びにおいても藤田菜々子騎手を積極的に使うなど、照哉氏は、経営者という仕事を楽しんでいるというか、肩に力が入っていない感じがしますよね。
対して勝己氏は、会社の発展に全力を注ぐビジネス本位で、経営の神様というか、松下幸之助タイプ?そんな感じ。
どちらが良いかというのはここでは論点ではありません。
山元トレセンについて書くつもりが、気持ち良い位脱線してしまいました。
では改めて、山元トレセンの分析に入りましょう。
山元トレセンを外厩で使った馬の成績はコチラです。
着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
---|---|---|---|---|---|
279- 237- 242-2020/2778 | 10.0% | 18.6% | 27.3% | 79 | 81 |
預託馬数が1000頭を超える外厩先の中では、天栄、しがらきに次いで第3位の成績です。
NFの攻勢にかつての勢いは無くなりましたが、まだまだ老舗健在!と言った所でしょうか?
ここから儲かるポイントを探っていきます。
山元上がりの馬を芝・ダート別で分けました。
馬場状態 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
---|---|---|---|---|---|---|
芝 | 152- 133- 144-1105/1534 | 9.9% | 18.6% | 28.0% | 66 | 78 |
ダート | 126- 104- 98- 915/1243 | 10.1% | 18.5% | 26.4% | 95 | 84 |
性別 | 着別度数 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回値 | 複回値 |
---|---|---|---|---|---|---|
牡・セン | 88- 70- 63- 545/ 766 | 11.5% | 20.6% | 28.9% | 103 | 95 |
牝 | 38- 34- 35- 370/ 477 | 8.0% | 15.1% | 22.4% | 82 | 67 |
そういえば、社台ファーム馬は去年JRAのG1を2勝しましたが、(ルヴァンスレーヴ、ノンコノユメ)その2勝とも、ダートG1だったのですね。
でも……
少し寂しい気がするのは私だけでしょうか?
間違いなく2000年代は、芝のG1はといえば、黄色と黒の勝負服が踊り輝いていた時代。
今のノーザンファームのように、「また社台かぁ」と、指をくわえて見られていた時ははるか昔のように感じます。
ノーザンファーム1強の壁は限りなく高いですが、独自路線でまた覇を争う存在になって欲しいものです。
ぜひ参考にして下さい。
長くなりましたが、最後までお読み下さいまして、ありがとうございました。
投稿者プロフィール
-
データを駆使した戦略競馬の賢才
人と違う視点や切り口で競馬を分析することに長けている頭脳派。データ分析ソフト『TARGET』を使いこなして、周りがアッと驚く馬券術を生み出す。そのレベルは折り紙付きだ。
最新の投稿
- 馬券力アップ2020年8月5日『友道厩舎の外厩上がりと人気馬には逆らうな』高橋広治
- 馬券力アップ2020年7月29日やはり今年は2歳戦線はビッグレッド&コスモ軍団!
- 馬券力アップ2020年6月22日『かつての2歳戦の雄が独特の存在感』高橋広治
- 馬券力アップ2020年6月10日『コントレイルの矢作芳人師は、実は在厩調整の鬼だった』高橋広治