『お花畑から砂漠に放り出された西村淳也騎手の未来は?』田中洋平

 

ノーザンファームの台頭に加えて、

エージェント制度が主流になったことで、

最近は若手騎手の使い捨てが問題になっています。

 

ひと昔前は所属厩舎の調教師を師匠として、

厩舎のために必死に下働きをして、馬に乗せてもらった。

 

という「ザ・昭和」という感じだったようです。

 

2018年に引退した岩元市三調教師と、

1996年から2010年まで所属していた和田竜二騎手の関係性が、

そんな雰囲気を感じさせますよね。

 

G1を7勝しているテイエムオペラオー。

 

岩元市三厩舎の管理で、

デビューから引退までの26戦すべて、和田竜二騎手が騎乗。

 

和田竜二騎手は1996年に騎手デビューしていて、

テイエムオペラオーで皐月賞を制したのは1999年。

 

デビュー3年目の若手騎手ですからね。

 

基本的な騎乗技術に、レースの駆け引き、

そしてプレッシャーも、若手騎手にはきつかったでしょうね。

 

そんな中、菊花賞で2着に敗れたことに激怒した竹園正繼オーナーが、

岩元市三調教師に鞍上の変更を迫る事件が勃発したそう。

 

しかし和田竜二騎手を降ろすのであれば、

転厩してもらうしかないと、岩元市三調教師が竹園正繼オーナーを説得。

 

その後、テイエムオペラオーはG1を6勝、

合計7勝して、当時の歴代最高賞金獲得馬となったわけです。

 

なんだかんだ言って、乗せ続けた竹園正繼オーナーも凄いですが、

岩元市三調教師と和田竜二騎手の関係は、まさに昭和の師匠と弟子ですね。

 

素晴らしいのひと言。

 

しかし今現在は、そんな人情話はゼロと言って良いでしょう。

 

ダメならすぐ乗り替わり。

 

騎手業もビジネスなので、結果を残せなかったらクビなのは仕方ない。

 

私もこの意見に反対はありません。

 

馬主だって調教師だってビジネスですし、

賞金を稼げなければ成り立たないわけですからね。

 

弱肉強食は当然です。

 

さてここからが本題で、

その弱肉強食の騎手業界でピンチに陥りそうな騎手が1人います。

 

それはズバリ!

 

西村淳也騎手!

 

横山武史騎手が率いる2017年デビュー組と、

岩田望来騎手や団野大成騎手などの有望株が揃う2019年デビュー組。

 

この狭間にデビューした2018年組3人衆の1人が、西村淳也騎手。

 

ほかの同世代は山田敬士騎手が頑張っていますが、

服部寿希騎手は騎乗機会も少なく、ほぼ開店休業状態。

 

西村淳也騎手 13勝

山田敬士騎手 7勝

服部寿希騎手 2勝

 

これはデビュー1年目の勝利数ですが、

あまりにも地味な世代ですね。

 

しかし西村淳也騎手は、ここから急成長します。

 

2018年 13勝

2019年 55勝

2020年 36勝(9月13日まで)

 

2年目は55勝を挙げて、リーディング19位を獲得。

 

この躍進の裏には、当然ですがノーザンファームがいます。

 

2018年 15回

2019年 100回

2020年 102回(9月13日まで)

 

ノーザンファーム生産馬に騎乗する回数が、

飛躍的に伸びたことによって、勝利数も比例してアップ。

 

勝利数を伸ばしたい若手騎手は、

休日にノーザンファーム天栄やしがらきに乗りに行って、調教を手伝う。

 

その見返りにノーザンの良い馬を回してもらう。

 

西村淳也騎手もこのパターンでしょう。

 

しかしノーザンファームは減量の恩恵がなくなれば、

急に良い馬を回さなくなります。

 

しかし2年目、3年目にガンガンと勝利していたら、

この状況がこの先ずっと永遠に続くと、若手騎手は思っている。

 

しかもガンガン勝っているのは、

自分の騎乗技術が上手くなったからだと勘違いしている。

 

ただ単にノーザンファームの馬が強いだけなのに。

 

そして強い馬に乗れなくなった若手騎手は、急に勝てなくなって腐っていく。

 

これが「若手騎手の使い捨て」問題です。

 

勝ちまくる状況が永遠に続くなんてあり得ないわけです。

 

でもまだ幼い若手騎手は、冷静に分析するなんてできないでしょう。

 

天狗になって横柄な態度になる。

 

そして受けた恩を忘れる。

 

だから減量が取れてピンチになったとして、誰も助けてくれない。

 

この負のスパイラルに陥るわけです。

 

お花畑から、いきなり砂漠に放り出されるような気持ちでしょうね。

 

では砂漠に放り出された、西村淳也騎手の成績を見てみましょう。

 

 

減量があったのは5月10日までで、5月16日から通常の斤量になっています。

 

騎乗依頼は2週先くらいまでは決まっているでしょうから、

減量の取れた5月中の乗り馬は、まずまずの質だったと推測できます。

 

そして6月に入ると、一気に成績が下降。

 

データの一番右、平均人気をみても分かる通り、

乗り馬の質がガクッと下がっているのが分かりますね。

 

1~5月 30勝

6~9月 6勝

 

これが減量が取れた若手騎手の現実です。

 

続いてノーザンファーム生産馬の騎乗成績を見てみましょう。

 

 

6月になると乗り馬の平均人気がガクッと下がって、

急に勝てなくなる。

 

そして8月に入ると騎乗機会が減っています。

 

このままスーッとなくなりそうな雰囲気ですね。

 

まずはこのままではヤバいこと、

そして自分の力ではなくて、環境のおかげだったことに気付く。

 

そこから気持ちを入れ替えて、

関係者と仲良くすれば、徐々にですが信頼を取り戻せるはず。

 

復活への道は、これしかないでしょう。

 

1年目に苦労している騎手なだけに、頑張って欲しいですね。

 

 

投稿者プロフィール

田中洋平
田中洋平
田中洋平(日刊スポーツ公認のコンピ指数研究家)
かつてはダイニングバーの経営者だったが、現在は競馬研究ひと筋。「競馬最強の法則」の馬券ブラックジャーナルコーナーにおいて、2009年に逃げ穴馬馬券術を紹介。2010年には同誌にて「コンピアナライズを追え」で巻頭でデビューを果たし、2012年にKKベストセラーズより「新コンピアナライズ・ゾーンレベル」を出版。現在は日刊スポーツ公認のコンピ指数研究家として日刊公式ウェブサイト「極ウマ・プレミアム」にてコラム、テクニカル6を連載中。また重賞特集号として日刊スポーツが発行しているタブロイド紙のコンピ予想も担当している。

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